第66章

夜。田中辰哉は会社に戻ると、思いがけず大島莉理のオフィスだけがまだ灯っているのに気づいた。

そっとドアを押し開ける。

机に突っ伏したまま眠り込んでいる大島莉理。傍らには途中まで目を通した書類が山積みで、モニターだけが青白く瞬いていた。

書類には細かな付箋と書き込みがある。相当な時間と神経を使って仕上げた跡だ。

起こそうとして手を伸ばし――そのまま、止めた。

辰哉はペンを取り、資料の余白に一行だけ走り書きする。

そして、音を立てぬようにドアを閉めた。

ぱたん。

その小さな気配に、大島莉理は夢から引き戻される。目をこすった瞬間、肩から何かがするりと落ちて床に転がった。

黒いジャ...

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